都心から一時間!藤野の家庭と一緒に作る、その日だけの「里山体験ツアー」

 東京都と山梨県にはさまれた、緑豊かな相模原市藤野地区。ここでは、自然を活かした里山の暮らしが体験できる、手づくりの「里山体験ツアー」が行われています。季節や参加者の希望によって、さまざまな内容が組まれるこのツアー。今回は、9月2日(土)に実施された農作業とうどん打ち体験に参加しました。

山の中腹に造形作家・高橋政行さんによるアート作品「緑のラブレター」が見えます。

 この日は、山間のラブレターが目印のJR中央本線・藤野駅に集合。横浜から藤野地区に移住した2家族と、都内在住の1家族、計3組が参加しました。

明け方は雨だったので、長靴に履き替えて畑に向かいます。

今回のツアーを率いてくれる佐藤鉄郎さんの畑で、植え付けと収穫を体験します。

 まず向かったのは、駅からほど近い山を少し上ったところにある、藤野観光協会事務局長の佐藤鉄郎(てつお)さんの畑。ここでは、きゅうり、トマト、ピーマン、なす、オクラ、シシトウ、モロヘイヤ、空芯菜、落花生など、年間80種類以上の野菜を育てているそうです。

子どもたちは植え付け、大人たちは収穫と、役割分担をして、作業を進めます。

野菜の苗をせっせと運びます。

佐藤さんに教えてもらいながら、苗を植えていきます。

 最初に植えたのは白菜。肥料が根に直接当たると根がだめになってしまうので、堆肥の上に土をかけて、苗を植えます。種から蒔くと、葉が細いうちにコオロギに食べられてしまうそうです。

土いじりをしていると虫を発見。

今度はキャベツを植えていきます。

 続いてキャベツ。苗の大きさは白菜とほぼ同じですが、色や固さが少し違うのがわかります。

植え付けを終え、子どもたちも収穫を手伝います。

モロヘイヤや大葉がたくさん採れます。

ハサミを使って大葉を採っていきます。

ひとりでに花をつけて種を落とし、増殖していたというパクチー。

畑からは山々が見えます。空もすっかり晴れました。

採れたものを種類ごとに分けて並べます。

 大葉にモロヘイヤ、オクラ、キュウリ、ピーマンと、緑の野菜をたんまり収穫。トマトやナスも採れました。

あっという間にカゴいっぱいになりました。

葉っぱの上にも虫を発見。

大きく育った里芋の葉っぱを切ってもらって日傘代わりに。

 山芋の赤ちゃん“むかご”は、初めて見たという人も。頭の上までのびた蔓から、大きめのものを収穫します。

山芋の蔓からむかごも採れました。

小さなむかご。炊き込みご飯や素揚げにするとおいしいそうです。

今日の収穫を山分け。

 採れた野菜は、家族ごとに分けて持ち帰ります。畑の手前に実っていた栗も、おみやげにと入れてくれました。

続いて、藤野駅をはさんで北側の、陣馬山方面に向かいます。

川の中をよく見ると、魚がたくさん泳いでいます。

 山道はせまいので、車を停めて少し歩きます。底が見えるほど澄んだ川には、ハヤという魚がたくさん。

坂道を上ると、登山客の憩いの場でもある、築300年超の古民家「一ノ尾茶屋」にたどり着きました。ツアー受け入れ農家の一つである、石井清さん・スミ子さんご夫妻の自宅でもあります。

メニューには「おたらし」の文字。藤野の郷土食で、小麦粉と水を混ぜて砂糖醤油などで食べる和風ホットケーキのようなものだそう。

店先では豆などを販売。サル除けのためにガラス戸が閉められています。

 お菓子とお茶で出迎えていただき、まるで親戚の家に遊びに来たよう。ご主人の清さんが、この家や近隣の昔話を教えてくれます。

ご主人の石井清さん。

茹でたてのうどんとお茶菓子で出迎えていただきました。

 まずは茹でたてを食べてみてと、熱々のうどんを用意していただきました。醤油と鰹節でいただきます。「引きずり出しうどん」という食べ方だそうです。

お代わりを勧められてついついたくさん食べてしまいますが、お腹いっぱいになる前に、今度は自分たちでうどんを打ちます。

ボウルで生地をまとめるところから始めます。

 スミ子さんが出してきたのは、昔から大事に使われていることがわかる年季の入った道具。力強く素早い手さばきでお手本を見せてくれます。

ボウルを押さえながら、二人がかりの作業。

大きな生地をまとめます。

 生地はとってもコシが強く、まとめるのはなかなか力が要るよう。大人とも交代しながら、外側から巻き込むようにして、生地を押さえます。

大人も挑戦。

 ボウルから生地を出したら、ビニール袋に入れて新聞で包み、足で踏みます。

踏む作業は一段と楽しそう。

 次に登場したのは、これまた年季の入った手回しの製麺機。縦に切った生地を、スミ子さんのOKが出るまで何度か製麺機にかけて、のばしていきます。

踏んでのばした生地を、縦に切ります。

手回しの製麺機でさらに生地をのばしていきます。

一人で挑戦。

厚みのあった生地が一気に平たくなって出てきます。

 さらに、のばした生地を細く切ります。

手際よくチーム作業で進めます。

製麺機にも慣れてきました。

ようやくうどんらしくなりました。

 茹でるところも子どもたちがお手伝い。薬味や漬け物、自家製のこんにゃくも用意していただき、食卓にはたくさんのお皿が並びました。

スミ子さんが茹で方まで指導してくれます。

最後まで子どもたちは興味津々。

みんなで薬味の用意やお皿運びを手伝います。

自家製の漬け物やこんにゃくも。

 今度は冷やしうどんをつゆでいただきます。うどんはもちろん、野菜やこんにゃくも、「手作りは違う!」と、皆さん舌鼓を打っていました。

自分で打ったうどんのおいしさに、箸が止まりません。

こんにゃくは味噌でいただきます。

大盛のうどんもあっという間になくなっていきます。

 「石井さんのような受け入れ家庭が増えて、多くの人に藤野ならではの暮らしを体験してほしい」というのが、佐藤さんの願い。今回のような農業体験やうどん打ちのほかにも、無農薬野菜の「使い切り料理」教室や、移住経験者の話も聞ける「まるごと藤野体験ツアー」、川遊び、バイクツアーなど、藤野に暮らすさまざまな人々と交流しながらその魅力を満喫できるツアーが、日々企画されています。

里山体験ツアーは佐藤さんや観光協会のスタッフの皆さん、受け入れ先の皆さんの尽力で成り立っています。

石井さんたちとお別れ。

 古民家の中を見せていただいたり、さらに野菜をおみやげにいただいたりと、たっぷりもてなしてくれた石井さんご夫妻と握手を交わして、今回のツアーは終了。「今度は釣りに来るね!」と、都内から参加した子どもたちも、すっかり気に入っていました。

観光に来ただけでは分からない、藤野の豊かな暮らしが日帰りで気軽に楽しめる里山体験ツアー。移住を考えている人も、週末のお出かけ先を探している人も、ぜひ参加してみてください。

藤野里山体験ツアー
http://fujinotaiken.wixsite.com/satoyama

特集一覧へ