「やまなみグッズ」特集: 神奈川県農協茶業センター、農産物直販加工所「とれたて山ちゃん」、盛月堂

「やまなみグッズ」は、神奈川県県西部にあるダム湖である「やまなみ五湖」地域の自然豊かな環境を生かして作られた特産品です。今回は、丹沢湖のある山北町を訪れ、やまなみグッズを製造している株式会社神奈川県農協茶業センター、農産物直販加工所「とれたて山ちゃん」、盛月堂の3社を取材しました。

※販売状況は2024年12月1日現在の情報です。各問合せ先にご確認の上、ご購入ください。

丹沢の風土で磨かれた芳醇な味と香りの「足柄茶」

直売所の前で神奈川県農協茶業センターの細野専務(左)と加藤部長(右)、生産者の細谷さん(中央)

神奈川県農協茶業センター(山北町川西)は、県西部に位置する丹沢・箱根山麓一帯の茶畑で摘まれた荒茶を一元的に集荷し、同社工場で製茶した商品を「足柄茶」として出荷しています。「全国茶品評会一等賞」や「農林水産大臣賞」を受賞するなど、栽培に適した気候風土で磨かれた足柄茶は市場で高く評価されています。足柄茶の生産に取り組む、同センターの細野克巳専務と加藤洋部長、地元生産者の細谷善國さんに話を伺いました。

寒暖差の大きい山間地の環境が良質な茶葉を育てています

足柄茶は、四季や昼夜の寒暖差が大きく、霧の多い山間地を中心に栽培されています。茶樹に適度なストレスを与える気温差は、茶葉の香りが増すための必須条件。また、丹沢の清流から立ち上がる川霧で日照が遮光されることで、葉肉が厚く育ち過ぎることなく、渋み成分(タンニン)の生成も抑制されます。一方で、うまみ成分であるテアニンが豊富に蓄積され、「うまみや渋み、甘みのバランスがとてもいい」と、生産者の細谷さんは胸を張ります。

山の茶畑で摘まれた生葉は鮮度の高いその日のうちに、生産者等の荒茶工場で蒸しなどの荒茶加工が施されます。適度に薄く柔らかい生葉が採れる足柄茶の産地では、30秒前後の短時間で蒸す「浅蒸し製法」が一般的です。じっくりと蒸すことで砕けた茶葉から出る濃緑色の「深蒸し茶」に対し、葉の繊維が崩れない「浅蒸し茶」は、山吹色をした香り高いお茶が楽しめます。

来年の一番茶の収穫に備え、古葉が入らないよう美しく製枝されている茶園で作業する細谷さん

「永年作物であるお茶は、1年や2年の努力で良くなるものではなく、長年にわたる土作りの積み重ねが必要です。荒茶加工も神経を使う作業で、生葉の性質を最大限に引き出せるよう、日ごとに異なる葉の状態に合わせ、蒸す時間や温度、風量を調整します」と細谷さん。「私たちのこだわる浅蒸し製法は、丸みのある葉の形状が残り、お湯を注ぐと葉がぱっと開き、山の香りをお楽しみいただけますよ」とにっこり。

生産者から持ち込まれる荒茶は統一規格の袋で集荷され、二次元コードのシールを貼り付け、データ管理されています

こうした荒茶を生産者から買い取り、長さや太さを揃え、茎や粉を除き、乾燥して仕上げ、製品にして出荷するのが、神奈川県農協茶業センターの役割です。生産者から提出される肥料などの生産過程をデータ化したり、自社基準による成分量の分析をしたり、品質管理を徹底した商品を消費者に届けています。

やまなみグッズ認定の足柄茶「白梅」はスタンダードなロングセラー商品で、「足柄茶の味を存分に味わっていただけます」と加藤部長。「浅蒸し茶は茶葉がしっかり締まっているので、少し冷ましたお湯を急須に注いで、じっくり1分ほど蒸らしてから注いでください」と、足柄茶の楽しみ方を教えてくれました。

同社の細野専務は「関東大震災からの復興策として、山北町で茶栽培が始まって来年で100周年。足柄茶は小さな産地だからこそ、希少価値を高めるブランド戦略を進め、販路を広げていければ」と意気込んでいます。

【商品情報】
◆白梅(100g)821円(税込)
◆しんめ(100g)1,072円(税込)
◆わかば(100g)765円(税込)
◆もえぎ(100g)548円(税込)

【主な取扱店舗】
神奈川県農協茶業センター 足柄直売所
住所:足柄上郡山北町川西652
TEL:0465-77-2001
営業:9:00~16:00
定休:水曜(12月31日~1月3日は休業)

その他:山北町観光協会、道の駅「山北」、丹沢湖記念館、町立中川温泉「ぶなの湯」、農産物直販加工所「とれたて山ちゃん」、神奈川県アンテナショップ「かながわ屋」など

※しんめ、わかば、もえぎは一部量販店などで扱っており、上記のショップでは扱っていません

地元の味にこだわった万能調味料

「山ちゃん」の加工商品は、組合の加工部員が開発し、農作業の合間に定期的に集まり、併設の作業場で製造しています

農産物直販加工所「とれたて山ちゃん」(山北町向原)は平成15年に地元農産物の直売や加工品の製造をする施設として誕生しました。地場産業を盛り上げるために町が設置し、地元生産者が組合を組織して運営しています。店舗では、地元生産者から持ち寄られた朝採れの新鮮野菜をはじめ、組合の加工部員が地元農産物を使って手作りするみそやジャム、漬物など、オリジナルの加工品十数種類が販売され、人気を集めています。

店舗にはみそをはじめ、柚子こしょう、ブルーベリージャム、湘南ゴールドマーマレードなど、バラエティ豊かなオリジナル商品が販売されています

創業当時、手始めに開発された加工商品が「山ちゃんみそ」です。地域で目立ち始めていた休耕田を活用するため、県内で古くから栽培されていた「幻の大豆」とされる希少品種、津久井在来大豆の栽培を普及させる取組が始まっていたことや、組合員の多くの家庭が昔から手仕込みで自家製のみそを作っていたことから、津久井在来大豆を生かしたみそを商品化しようと考えたそうです。

山ちゃんのみそ作りは、甘みが強く、こくの深い津久井在来大豆のみを使用し、丹沢の名水や地場産のはるみ米を発酵させた麹で仕込むという素材にこだわった手作りの製法を開設当初から続けています。その関連商品として生まれたのが、万能調味料の「柚子みそ」と「唐辛子みそ」です。加工部長の磯﨑加代子さんは「地元の素材を生かした無添加の家庭の味。リピーターも多く、売れ筋の商品です」と話します。

インタビューで「山ちゃん」での取組を生き生きと語る清水組合長(左)と磯﨑加工部長(右)

山北町は昔から柑橘類の生産が盛んな地域。地元で生まれ育った清水正己組合長は「ミカン栽培は九州や四国で盛んですが、温暖な土地である山北町でも明治時代から栽培され、生産の北限地として知られていました。同じ柑橘類のユズの木が数本植わっている家も昔から珍しくありませんでした」と話します。

そんな地元らしさを発揮した商品が「柚子みそ」です。10月下旬から実がよく熟し始めたユズを地元の農園などから仕入れ、芳醇な香りを蓄えた果汁と果皮を山ちゃんみそのペーストに合わせます。柑橘系の爽やかな香りと甘みが添えられた調味料に仕上がっています。

加工部員の瀬戸洋子さん。みそ作りのため、自宅の裏で唐辛子を栽培しています。

それとは対照的に、ピリッと辛みの利いた味に仕上げたのが「唐辛子みそ」です。唐辛子は、みそ作りのために加工部員がそれぞれの畑で栽培しています。9月初旬から赤くなる前の辛みの強い青唐辛子を収穫して持ち寄り、ごま油で香ばしく炒め、味噌ペーストに和えて仕上げます。

「柚子みそ」「唐辛子みそ」は現在、年間で各300本ほどを製造しています。山北町や南足柄市、小田原市の直売所などに出荷していますが、さらなる販路を拡大し、製造数を伸ばすことが目標です。磯﨑加工部長は「キュウリやコンニャク、サトイモなど、採れたての農産物につけて楽しんで欲しい。ご飯にのせるだけでもおいしいですし、麻婆豆腐やナスのみそ炒めにもおすすめ。ぜひお試しください」と話しています。

【商品情報】
◆柚子みそ(150g)500円(税込)
◆唐辛子みそ(150g)500円(税込)

【主な取扱店舗】
農産物直販加工所「とれたて山ちゃん」
住所:足柄上郡山北町向原1823-1
TEL:0465-75-3026
営業:9:00~16:00
定休:月・木曜日(月曜祝日の場合は翌日)、12月29日~1月6日

その他:山北町観光協会、道の駅「山北」、道の駅「足柄・金太郎のふるさと」、丹沢湖記念館、朝ドレファ~ミ♪(小田原市)など

丹沢らしさあふれる定番土産 「猪」もなか

イノシシを模した和菓子。パッケージは昭和30年代の販売開始当時から変わりません

山北町の中川温泉で定番の土産品といえば、温泉マークの刻まれたイノシシの形がかわいらしい和菓子「丹沢の猪」が真っ先にあげられるでしょう。これを製造しているのは、大正11年創業の老舗和菓子店「盛月堂」(山北町山市場)です。同店4代目店主の高橋佳信さんに話を伺いました。

高橋さんは毎日作業場に入り、仕込みをしています

商品が誕生したのは昭和37年。当時、生菓子やパンを卸していた中川温泉のホテルから、宿泊客から喜ばれる地元の土産品を置きたいと、イノシシの形をした「もなか」の開発を持ち掛けられたことがきっかけ。丹沢山地にある同町では、紅葉シーズンに「しし鍋」を千人に振る舞う「西丹沢もみじ祭り」が伝統的な恒例行事として毎年開催されているように、昔からイノシシは地域になじみのあったモチーフです。

そんなホテル側の意向をくみ取りながらたどり着いたのが、イノシシ型に成形した皮にたっぷりのあんこを詰めて閉じるという現在の製法でした。「当時は観光バスが何十台も止まるほどにぎわっていたそう」(高橋さん)という同ホテルで販売を始めると、地元ならではの土産品としてたちまち評判となり、周辺の宿や施設でも扱われるようになったそうです。

手作業で一つ一つ丁寧に皮に自慢のあんこが詰められていきます。あんこもたっぷりボリューミー

「もなかは何と言ってもあんこが命、決め手なんです」と話すように、高橋さんが特にこだわっているのがあんの作り方です。質の良い北海道産小豆のみを使用し、その日の気温によって煮詰め方を調整するのが腕の見せどころ。「夏は硬め、冬は軟らかく練り上げないと、もなかの皮に馴染まなくなります。季節の変わり目はその具合が難しく、長年の勘が頼りです」と高橋さん。練り上げた粒あんに、こしあんを加えて混ぜるのが同店の特色。食べ応えのあるボリューミーな仕上がりになっています。

仕上がったあんは、手作業で一つ一つもなかの皮に詰めていきます。製造から配達まで一人で店を切り盛りしているため、作る数には限界があるものの、年間では1万5千個~2万個を製造しています。出荷先は、地元の温泉旅館をはじめ、道の駅や高速道路のパーキングエリアなど。やまなみグッズをはじめ、町のやまきたブランドにも認定され、地元の土産品として根付いています。

地元の観光を盛り上げるため、商品を残していきたいという思いを語る高橋さん

高橋さんは「令和9年には山北スマートインターチェンジ(仮称)も開通する予定ですので、地元観光が盛り上がるはず。今は一人で精いっぱいのところでやっていますが、地元でここまで浸透している商品ですので、伝統といいますか、お客様の声に応えて、少しでも長く地元の商品として残していくことが私の務めなのでしょうね」と言葉に力を込めていました。

【商品情報】
◆丹沢銘菓「丹沢の猪」6個入り650円(税込)/10個入り1,080円(税込)

【店舗情報】
盛月堂※店舗での販売はしていません
住所:足柄上郡山北町山市場133
TEL:0465-77-2468

【主な取扱店舗】
山北町観光協会、道の駅「山北」、丹沢湖記念館、町立中川温泉「ぶなの湯」、鮎沢パーキングエリア(下り)、小田原百貨店山北店・大雄山店など

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