湖畔の”いいとこ”ぐるっとドライブ 津久井湖・奥相模湖のおすすめコース

ダム開発で誕生した津久井湖と奥相模湖は、相模川水系の豊かな水を蓄えており、周辺には、美しい自然と調和した観光資源がたくさんあります。湖畔の美しい景観を一望するジェラート専門店や、地場産品を豊富に取りそろえる農産物直売所、日常を離れてゆっくりと落ち着けるカフェなど、ダムの成り立ちも学びつつ、津久井湖から奥相模湖までを巡る日帰りコースをドライブしてみましょう。

津久井湖

圏央道相模原ICを相模湖方面に降り、東金原交差点を右折して県道65号から住宅街を抜けると、眼前には津久井湖が広がります。津久井湖は、神奈川県内の水需要の高まりを受けて昭和40年に完成した城山ダムによって誕生した人造湖で、湖畔には桜や紅葉の名所が点在し、四季折々の景観を楽しむことができます。

神奈川県立津久井湖城山公園「水の苑地」

この津久井湖に沿って整備されているのが、神奈川県立津久井湖城山公園です。この公園は、戦国時代の北条氏の支城だった山城「津久井城」の跡地にあり、津久井湖(城山ダム)の東西両岸に位置する「花の苑地」「水の苑地」などで構成されています。今回は「水の苑地」の駐車場に車を止め、周辺を散策してみましょう。

「水の苑地」のシンボルが、中央の芝生広場へと続く階段と一体化したこの水場です。「水の旅」をテーマとしており、階段から噴水池へ水が滝のように流れ落ちる様はとても涼しげです。

この水場は回廊となっており、降り注ぐ日差しが反射し、美しい水のトンネルを歩いているようです。水場の周囲の花壇では、5月にはルピナス、8月末から9月頃には百日草が植栽され、季節を彩ります。芝生広場で犬の散歩をする人や、木陰のベンチで穏やかなひと時を過ごす人々を見かけました。

県立津久井湖城山公園 水の苑地
【所在地】相模原市緑区城山2-9-7【電話】042-780-2420(公園管理事務所)【アクセス】「橋本駅」から「三ヶ木(中野経由)」行きバス(橋01系統)「城山高校前」下車、徒歩3分。または、車で横浜方面から国道16号橋本駅南口交差点を過ぎ、国道413号を津久井方面へ約30分
※噴水 運転時間:9:30~16:00、階段:3分間隔、滝:12分間隔
※イベント時や清掃時、冬期凍結時(12月1日~3月20日頃)は停止

津久井湖記念館

津久井湖の美しい風景と、山から流れ込む新鮮な空気で胸をいっぱいにした時、ふと疑問が湧いてきました。「この津久井湖は、いったいどのようにしてできたのだろう」。この謎は、水の苑地に隣接する津久井湖記念館で解決することができます。早速訪れてみました。

津久井湖記念館では、1階部分に津久井湖の巨大なジオラマと、津久井湖・城山ダムの建設事業である「相模川総合開発事業」を解説するパネルが設置されています。これによると、昭和20年代後半に調査が始められていた城山ダム計画は、神奈川県、横浜市、川崎市、横須賀市の共同事業として、急速な人口増加に伴って予測される神奈川県民の水需要に応えるため、昭和40年に完成しました。

城山ダム(津久井湖)の開発にあたり、大量の水をためておくことができる土地が必要となりました。そこで、白羽の矢が立ったのが、現在の津久井湖の土地でした。同館2階には、かつてこの地で営まれていた生活の様子を物語る農業機材や文化、水没前の風景写真などが展示されています。

「城山ダム」は現在、水道水の確保だけではなく洪水調節や発電の役割も果たしています。洪水調節では、雨量の多い6月1日から10月15日を洪水期と定めて、放水量の調整を行います。また、発電の面では、城山発電所を設置し、およそ8万世帯分の電力をまかなうほどの最大出力25万kwの発電を行っています。

津久井湖記念館では、人気のダムカードを配布しています。このカードには、ダムの建築形式や、技術、貯水池の容量といった基本的な情報に加えて、ちょっとマニアックな情報も掲載されており、このカードを求めて訪れる人が多いのだとか。この津久井湖記念館では、「城山ダム」「道志ダム」「本沢ダム」の3種類のカードを手に入れることができます。「道志ダム」と「本沢ダム」のカードを入手するには、各ダムを訪れたことが分かる写真を見せる必要があります。

津久井湖記念館
【所在地】相模原市緑区城山2-9-5 【営業時間】10:00~16:00 【定休日】毎週火曜、年末年始 【電話】042-782-2414 【アクセス】「橋本駅」から「三ヶ木(中野経由)」行きバス(橋01系統)「城山高校前」下車、徒歩2分。または、車で横浜方面から国道16号橋本駅南口交差点を過ぎ、国道413号を津久井方面へ約15分
※ダムカード詳細:https://www.pref.kanagawa.jp/docs/vh6/cnt/f8018/p71236.html

 

城山ダム

津久井湖・城山ダムの歴史を学んだ上で、実際に「城山ダム」を見に行ってみましょう。津久井湖記念館から津久井街道方面に進むと、城山ダム展望台を訪れることができます。

城山ダム展望台からの眺望がこちらです。堤高は75m、堤頂長は260mで、その上を津久井街道が通り、車などで通行することができます。6門のゲートを備え、台風等の大雨時に洪水調整を実施し、神奈川県民の水需要を今も支え続けています。

城山ダム
【所在地】左岸:相模原市緑区城山、右岸:相模原市緑区太井【電話番号】042-782-2831(神奈川県企業庁相模川水系ダム管理事務所)【アクセス】「橋本駅」から「三ヶ木(中野経由)」行きバス(橋01系統)「城山高校前」下車、徒歩2分。または、車で横浜方面から国道16号橋本駅南口交差点を過ぎ、国道413号を津久井方面へ約20分

Megu Gelato(メグジェラート)

水の苑地や津久井湖記念館、城山ダムを散策して、小腹がすいてきました。すると、津久井湖記念館の隣に、かわいらしいジェラート専門店を発見しました。

ここは、地元食材を生かした手作りジェラートを提供している「Megu Gelato(メグジェラート)」。写真投稿SNS「インスタグラム」で6,000フォロワーを超えるフォトジェニックな人気店です。

同店は、相模原市出身の塩田恵美代表が令和元年に起業し、当初はキッチンカーでの移動販売を中心に営業を行っていました。津久井湖と丹沢山系の眺望に一目ぼれした塩田代表は、以前からこの場所に着目していたそう。令和2年に空き店舗となったことから、店舗型の営業に踏み切ったと言います。

一番人気は、篠﨑農研(愛川町)の生乳をふんだんに使った「しぼりたてミルク」。濃厚なミルクのコクが口いっぱいに広がります。また、美しい茶畑の風景で「にほんの里100選」にも選ばれている陣馬山の近くで栽培された佐野川茶を使った「佐野川茶」味も人気だとか。この他、色とりどりのジェラートが並び、秋には栗やカボチャ、マスカットといった季節のフレーバーを取り入れて、訪れるたびに旬の味を楽しむことができます。

Megu Gelato
【所在地】相模原市緑区城山2-9-4 【営業時間】10月~2月:毎週水曜10:30~16:00、土日祝10:30~16:30(売切れ次第終了)、3月~9月毎週水曜と土日祝10:30~16:30(売切れ次第終了) 【定休日】毎週月曜、火曜、木曜、金曜 ※天候不良による臨時休業有【電話】050-3555-4690【アクセス】「橋本駅」から「三ヶ木(中野経由)」行きバス(橋01系統)「城山高校前」下車、徒歩4分。または、車で横浜方面から国道16号橋本駅南口を過ぎ、国道413号を津久井方面へ約20分

城山湖・本沢(ほんざわ)ダム・龍籠山 (たつごやま)展望台

次は城山湖・本沢(ほんざわ)ダムに向けて車を発進させます。城山湖は、本沢ダムによってできた人造湖で、「水の苑地」から車で10分ほど、曲がりくねった山道を抜けた先にあります。

山頂近くにあるため遮蔽物がなく、その眺望は見事そのもの。城山湖は、「かながわの探鳥地50選」や「かながわの公園50選」にも選ばれており、取材に訪れたこの日も、30名ほどのバードウォッチャーが双眼鏡やカメラを片手に野鳥観察を楽しんでいました。

せっかくなので少し足を延ばして、隠れた絶景スポットも訪れてみましょう。城山湖の近くにある金刀比羅宮(ことひらぐう)からさらに登ったところにある龍籠山(たつごやま)展望台です。

この金刀比羅宮の境内から右にある小道をさらに数十メートル登っていくと、絶景が広がっています。

写真左側の高層ビル群は、品川から名古屋、大阪間を67分で結ぶ予定のリニア中央新幹線の「神奈川県駅(仮称)」の整備が進む橋本駅周辺です。天気の良い日は、東京スカイツリーや東京タワー、川崎市・武蔵小杉のマンション群、横浜ランドマークタワーなどを見渡すことができます。

城山湖(本沢ダム)
【所在地】相模原市緑区川尻【アクセス】「橋本駅」から「若葉台住宅」行きバス(橋08系統)「若葉台住宅」下車、徒歩約50分、または、「橋本駅」から「大戸」行きバス(橋63系統)「大戸」下車、徒歩約40分。または、車で圏央道相模原IC相模原市街方面から、「新小倉橋東側」を左折し県道48号へ、「向原」を左折し県道508号へ、国道413号へ入り、「都井沢」を右折し道なりに進み約10分

龍籠山(たつごやま)展望台
【所在地】相模原市緑区川尻【アクセス】「橋本駅」から「若葉台住宅」行きバス(橋08系統)「若葉台住宅」下車、徒歩約45分。または、「橋本駅」から「大戸」行きバス(橋63系統)「大戸」下車、徒歩約35分。または車で圏央道相模原IC相模原市街方面から、「新小倉橋東側」を左折し県道48号へ、「向原」を左折し県道508号へ、国道413号へ入り、「都井沢」を右折し道なりに進み、コミュニティ広場駐車場から徒歩約5分

JA神奈川つくい農畜産物直売所「あぐりんずつくい」

城山湖から下り、国道413号から奥相模湖方面へ進む沿線にあるのが、JA神奈川つくい農畜産物直売所「あぐりんずつくい」です。

あぐりんずつくいの魅力は、何といっても、地元農家から毎朝届く採れたて野菜や果物、加工品です。新鮮な野菜を求め、取材当日も午前10時のオープン前から店舗の周りに今か今かと開店を待つ人々が集まっていました。

また、時にはヘビウリといった変わり種の農産物が並ぶことも。

あぐりんずつくいでは、水源地域の特産品「やまなみグッズ」を購入することができます。

令和5年に新たにやまなみグッズに仲間入りした「さがみ湖うみくんふぁーむ世界一辛い唐辛子キャロライナ・リーパー入り七味」は、相模湖の農家が栽培した「キャロライナ・リーパー」を使った猛烈に辛いスパイスです。「地粉うどんひもの里」は、津久井地区の伝統工芸品の組みひもにちなんで名付けられた乾麺。「津久井在来大豆みそ」は、かながわブランドにも認定されている”幻”の大豆「津久井在来大豆」を使用し、味噌汁や和え物に深みある風味を与えます。「とこはむの革製品」は、津久井地域の野生動物の革を使用した商品です。

JA神奈川つくい農畜産物直売所「あぐりんずつくい」
【所在地】相模原市緑区中野625-1 【営業時間】〈直売店〉※日・祝祭日は17:00まで 4月~11月10:00~17:30、12月~3月10:00~17:00 【定休日】毎月第3水曜、12月31日~1月4日 【電話】042-850-4183(直売場)【アクセス】「橋本駅」から「三ヶ木」行きバス(橋01系統)「相模中野」下車、徒歩3分。または、車で国道413号「県合同庁舎前」左折後すぐ

ZEBRA Coffee & Croissant (ゼブラコーヒーアンドクロワッサン)津久井本店

国道413号をさらに奥相模湖に向かって進んでいくと、モダンなカフェを発見しました。ここは、「ZEBRA Coffee & Croissant(ゼブラコーヒーアンドクロワッサン)津久井本店」です。

工場をDIYで改築し、平成24年にオープンした同店。オーナーの嶋田耕介さんによると、「普段、渋谷でデザインの仕事をしている自分が、このカフェを目的地にドライブをしてゆっくりと落ち着けると思えるような場所を作ろう」とのコンセプトで店をデザインしたと言います。

天井高5m、店舗面積220㎡の広々とした店内は、秋田杉の無垢材で組み上げたテーブルと椅子が配置され、大きな窓からは光が降り注ぐ周囲の自然と調和した空間が広がっています。

この日は、フレンチプレスコーヒーとクロワッサンを注文しました。店内の焙煎室で丁寧に焙煎された豆の香りが華やかなコーヒーと、フランス・ボース産の小麦粉に無精製のきび砂糖や地中海産の塩、北海道産のバターを織り交ぜて14時間発酵させたというクロワッサン。素材から製法までこだわり抜いたランチで、心が落ち着く至福のひと時を過ごすことができました。

ZEBRA Coffee & Croissant 津久井本店
【所在地】相模原市緑区中野1890-1【営業時間】 土日祝9:00~18:00、平日9:00~17:00【電話】042-780-8600【アクセス】「橋本駅」から「三ヶ木」行きバス(橋01系統)「祥泉寺」下車、徒歩1分。または、車で国道413号沿い

奥相模湖・道志ダム

心とおなかを満たしたところで、いざ奥相模湖へ。国道413号を南下し、途中で県道76号(山北藤野線)へ乗り換えて車を走らせること約20分。道志ダムに到着しました。

道志ダムは、昭和30年に完成したダムです。その大きさは堤高32.8m、堤頂長74m。道志川の水を相模ダムにつないだり、道志ダムから相模ダムへとつなぐ水の落差を利用して水力発電を行ったりする目的で建設されました。道志川の水は、明治30年から横浜の水道水として利用されており、かつて外国航路に向かう船乗りたちから、「赤道を越えても腐らない」と水の良質さが称えられたと伝えられています。

道志川の水が流れ込む奥相模湖は、道志ダムの上から確認することができます。

道志ダムで隔てられた先は、写真のような光景が広がっています。神奈川県は、この道志ダムを調整弁のように活用し、相模ダム(相模湖)や宮ヶ瀬ダム(宮ヶ瀬湖)、城山ダム(津久井湖)へ導水しています。

道志ダム・奥相模湖
【所在地】左岸:相模原市緑区牧野、右岸:相模原市緑区青根【電話番号】042-782-2831(神奈川県企業庁相模川水系ダム管理事務所)【アクセス】橋本駅より三ヶ木行きバス(橋01系統)で「三ヶ木」で下車し「東野」行バスへ乗り換え、青根公民館前で下車、徒歩25分(平日4本のみの運行となります)。または、車で国道412号から道志みち(国道413号)へ

青根緑の休暇村・いやしの湯

旅の最後は、道志ダムの近くに位置する「青根緑の休暇村・いやしの湯」の温泉で旅の疲れを癒やしましょう。青根緑の休暇村は、道志川流域に位置し、宿泊やキャンプを楽しむことができる施設です。

「いやしの湯」は、源泉かけ流しの温泉施設です。源泉は、約500万年前の地層となる地下1,310mに蓄えられた水をくみ上げています。

その泉質は、「カルシウム・ナトリウム・硫酸塩泉」で、pH値は9.19の低張性アルカリ性。「しっとりとなめらかさ」があるのが特徴で、「ゆっくりとやや長めに入浴することがオススメ」とのこと。澄み切った空気の中、都会の喧騒を忘れ、源泉かけ流しの湯やヒノキ風呂、岩風呂の他、四季折々の山々を眺めることができる露天風呂で、安らぎの時間を過ごすことができます。

青根緑の休暇村・いやしの湯
【所在地】相模原市緑区青根844【電話番号】042-787-2288 【営業時間】3月~12月:10:00~21:00、1月~2月:10:00~20:00 【定休日】毎週火曜(火曜が祝日の場合は翌日) 【料金】大人(3時間)750円、(1日)1,050円 子ども(小学生)(3時間)430円、(1日)630円【アクセス】橋本駅より三ヶ木行きバス(橋01系統)で「三ヶ木」で下車し「東野」行バスへ乗り換え、東野で下車、徒歩20分(平日4本のみの運行)。または、車で圏央道相模原ICから国道412号経由、「青山」交差点を左折、道志みち(国道413号)で山中湖方面へ約12㎞

 

いやしの湯で、体も心もリフレッシュをしたら、今回のドライブ旅は終了です。神奈川県の水需要に応えるべく整備された城山ダム(津久井湖)と本沢ダム(城山湖)、道志ダム(奥相模湖)の成り立ちを学びつつ、その沿線にあるジェラート専門店や農畜産物直売所、カフェなどを巡る、大人のドライブ旅でした。
このほか、津久井湖から奥相模湖はキャンプや釣りといったアウトドアレジャーの名所も多く知られています。
次の休日は、東京都内や神奈川県内からもアクセスしやすい「津久井湖」「奥相模湖」を訪れてみてはいかがでしょうか。

<今回のルート>

圏央道相模原IC(相模湖方面) ⇒ 車で約10分 ⇒ 津久井湖・県立津久井湖城山公園「水の苑地」 ⇒ 津久井湖記念館 ⇒ 徒歩約5分 ⇒ 城山ダム(城山ダム展望台) ⇒徒歩約5分 ⇒ Megu Gelato(「水の苑地」内) ⇒ 車で約10分 ⇒ 城山湖(本沢ダム) ⇒ 徒歩約10分 ⇒ 龍籠山展望台 ⇒ 車で約15分 ⇒ JA神奈川つくい農畜産物直売所「あぐりんずつくい」 ⇒ 車で約5分 ⇒ ZEBRA Coffee & Croissant 津久井本店⇒ 車で約20分 ⇒ 道志ダム・奥相模湖 ⇒ 車で約1分 ⇒ 青根緑の休暇村・いやしの湯
※各施設の利用休止や営業時間、サービスに変更が生じる可能性がありますので、事前にご確認の上ご利用ください。

<Googleマイマップ>
https://www.google.com/maps/d/u/0/edit?mid=1Cdnhu0B9WzJoAaaNUk06E-2_2bHKVJE&usp=sharing

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